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試験概要税理士「税法」科目免除大学院入試対策講座

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税理士法における税理士試験での科目免除制度とは?

税理士科目免除とは、大学院で、「税法」または「会計学」に属する科目等の研究(主に修士論文の執筆)を行った者に対し、税理士試験での試験科目を免除する制度です。

ご存知の方も多いと思いますが、この科目免除制度については、2002年4月の税理士法の改定に伴い、現在は、会計学に属する科目を1科目、税法に属する科目を1科目、合計2科目は税理士試験で合格しなければならなくなっており、以前より、この制度自体が厳しくなったといえます。

その一方で、免除申請をするにあたり、出身研究科が問われるのではなく、研究(修士論文)の内容やその他一定の要件を満たせば免除申請ができるようになったという点もあります。従来の制度では、「法律学または財政学の研究科にて学位(修士号)を取得した者」対象で研究科の指定がありましたが、これが「税法に属する科目(その他財務省令で定めるもの)にて学位(修士号)を取得した者」「会計学に属する科目(その他財務省令で定めるもの)にて学位(修士号)を取得した者」となったのです。より“実質重視”の制度に移行したともいえるでしょう。

これ以降、2002年4月からスタートとした新税理士法における税理士試験の科目免除制度について、「税法」に関する部分をクローズアップして解説していきます。

税理士「税法」科目免除 2つのメリット

一つは、仮に試験で1年間1科目の合格目標と考えた場合、2年間で2科目合格するよりも、大学院の2年間で免除を受けられる確率の方が圧倒的に高いことです。税理士試験で科目合格できる人は毎年10人に1~2人の割合です。大学院に進学した場合は、必要単位を修得した上で、修士論文を執筆し、国税審議会に認定されれば免除が受けられます。

もう一つは、大学院で法律を体系的に学ぶことで、いろいろな判例を勉強する機会となり、法律の解釈力を身に付けられることです。税理士になると、単純な事務手続きだけでなく、クライアントが判断に迷うようなケースの相談に対し判断を下す機会も増えるかと思います。その際、大学院で体系的に学んだ知識が役に立つケースが多いそうです。

時代の変化とともに注目される「税法」科目免除制度

河合塾KALSの大学院入試対策講座で長年、受験指導している黒須講師は次のように話します。 「免除制度を利用するため、河合塾KALSに大学院の進学相談に来られる方は年々増えています。実際、税理士試験の受験者数自体は減少傾向にあるとはいえ、それでも科目合格をする方は10人に1~2人しかいませんから、他の法律系国家試験と同じく相当の難関試験であることに変わりありません。また、税理士を取り巻く状況も大きく変化しております。実務では会計系システム等の発達などから、求められる知識・スキルの内容が変わってきました。

さらに、財務指南やコンサルティング等の業務も重要視されています。長い期間、頑張って勉強して試験に合格した後も、これからの税理士として成功するためには、税理士試験的な専門知識だけでなく、それらに関連する実務能力が求められているのです。

そう考えると、できるだけ早く税理士資格を得て、早いうちに実務経験を積むという方法は、とても合理的で今の社会に合っているといえるでしょう。知識は実務からも得ることはできるし、法律もどんどん変わるものです。試験でなかなか科目合格できず、資格取得まで何年もかかるリスクを負い、さらにそのリターンも不透明な中で、「“試験オンリーの5科目”にこだわる理由はもはや無いように思います。」

税理士試験「税法」科目免除の要件

税理士になるためには、通常、税理士試験で合計5科目に合格しなければならず、そのうち税法科目については3科目を合格しなければなりません。科目免除制度を利用した場合、大学院(修士課程あるいは博士前期課程)を修了すれば、この税法3科目のうち2科目を免除申請することができます。

免除申請のタイミングは、税法科目1科目を合格した後になります。この1科目の合格は、大学院進学前でも進学後でも、いつの時点でも可能です。また、合格 しなければならない1科目は、どの税法科目でも構いません。選択必修科目である「法人税法」又は「所得税法」でなければいけないと勘違いされる方もいらっしゃいますが、そのようなことはありません。「消費税法」でも「酒税法」でも構わないのです。

では、科目免除を受けるためには、大学院でどのような要件を満たさなければならないのでしょうか。それは、修士論文の執筆と単位の修得です。

科目免除の条件

修士論文の執筆

科目免除申請の条件の1つ目は、「修士論文の執筆」です。これは、大学院のカリキュラム自体が修士論文の作成を“必修”または“選択必修”であることも要件とされます。修士論文を必修としない、高度専門職業人養成を目的とした専門職大学院等は、免除の対象ではないと考えた方が良いでしょう。

それでは、この修士論文はどのような内容のものであれば良いのでしょうか。税法科目免除の対象となるのは、税理士法では「税法に属する科目」、すなわち税理士試験の税法の試験科目とされています。それ以外にも、「財務省令で定めるもの」として、(1)税法の試験科目以外の租税(関税、とん税および特別とん税を除く)に関する法律 (2)外国との租税(関税、とん税および特別とん税を除く)に関する協定を扱う科目 (3)「税法の試験科目および(1)・(2)」に類する科目、とされています。なお、(3)については、複数の税法を横断的に扱う科目(たとえば「租税法」)等が該当します。研究テーマには該当するものとそうでないものがありますので、注意が必要です。

さらに、修士論文の指導教授が税法に属する科目等の指導ができなければ、要件が満たされないことになりますので、指導教授が税法科目免除に該当する範囲を指導領域としているかどうかが問われます。

単位の修得

科目免除の要件の2つ目は、「単位の修得」です。これは、修了単位の中に、「税法に属する科目等を内容とする単位を4単位以上履修している」ということです。ここで注意しなければならないのは、この単位の中には演習やゼミなど、いわゆる“修士論文指導”での単位は含まれないという点です。したがって、講義としての科目(講義とはいえ、大学院の場合はレクチャー形式ではなく、発表及びディスカッション等の授業スタイルが多いと思います)、たとえば「租税法」や「法人税法」等の科目が設置されており、それを履修することが要件となってきます。

どの研究科に進むべきか?

免除が可能な研究科は原則として、(1)法学研究科、(2)経済学研究科、(3)商学研究科または経営学研究科 の3つです。さらに、その研究科に税法科目免除の対象となる指導をできる教授がいるかどうかということになります。この中のどの研究科を志望するかで、入試対策、在学中の研究、さらに修了後のキャリア等に、大きく違いが出てきます。

法学研究科

まず、法学研究科については、入試では当然、法律に関する試験を受けなければなりません。また、進学後は憲法、民法等の法律科目を多く履修することになります。修士論文は、法の解釈や判例研究といった“法律からのアプローチ”で作成することになると思います。

経済学研究科

次に、経済学研究については、入試ではミクロ経済学、マクロ経済学、財政学等、経済学に関する試験を受けることになるでしょう。入学後は入試科目と同様、経済に関する科目を履修し、多くの場合、“財政学からのアプローチ”で租税論に関する修士論文を作成することになります。また、税法の指導教授がいる場合には、法学研究科と同様、“法律からのアプローチ”で作成することになると思います。

商学研究科・経営学研究科

最後に、商学研究科または経営学研究科については、入試では会計学や経営学の試験を受けることになります。そして、入学後に履修する科目も経営・会計・商学系の科目であり、商学研究科または経営学研究科で税法科目免除が可能ということは、税法の指導教授がいるということですので、修士論文は法学研究科と同様、“法律からのアプローチ”で作成することが多いようです。

税理士「税法」科目免除大学院入試対策

法学研究科の筆記試験

法学研究科の筆記試験は、大きく3つのパターンに分けることができるでしょう。それは、(1)専門科目を2科目(英語の代用として専門科目を選択した場合 も含む)解かなければならない、(2)専門科目を1科目解かなければならない、(3)専門科目1科目と英語を解かなければならない。そして、(3)が一般的なパターンであるように思います。社会人入試の場合は、(2)が多数です。

また、試験科目は“税法は必修”(ご自身の専攻する科目は必修であることがほとんどです)の可能性があります。したがって、専門科目の入試対策としては、 税法(憲法、民法、商法等税法に関連する領域も含め)+英語を中心とし、志望校の入試形態に合わせ、他の専門科目1科目を勉強することが望ましいと思います。法律科目は学習範囲が広いものが多いですが、大学院ごとの過去問を見ると、それぞれ特定分野に絞って出題されている傾向があります。ですから、出題傾向をしっかり読み取り、効率よく勉強しましょう。

英語に関しては、一般的な大学院同様、全文和訳、下線部和訳、全文要約等の読解問題が主流です。出題される英文の内容は、法学・政治学系のものとなりま す。構文としてはさほど難しくはありませんので、テクニカルタームの学習や内容の読み取りを中心に入試対策を進めてください。

経済学研究科の筆記試験

経済学研究科の筆記試験は、経済学(大学院によっては税法や会計学でも受験可もあります)と英語が出題されるところがほとんどです。

専門科目である経済学は、ミクロ経済学、マクロ経済学、財政学等細かく分類し、出題されています。これも出題傾向を読み取り、効率のよい勉強を行ってください。税法を中心に勉強されている方は、財政学に絞って勉強することも良いかもしれません。志望とする大学院の出題傾向から判断してみてください。また、英語に関しては、前述の法学研究科と同じく読解中心ですが、その出題される英文の内容が経済系のものとなります。

商学研究科または経営学研究科の筆記試験

商学研究科または経営学研究科の筆記試験は、経営学、会計学、商学(大学院によっては税法や経済学が出題される場合もあります)の専門科目と英語が出題されることがほとんどです。

この研究科を受験される方で、税理士試験の簿記論、財務諸表論について勉強・受験経験がある場合、専門科目の入試対策は比較的容易だと思います。それは、税理士試験の財務諸表論の理論の知識が、そのまま大学院入試の専門試験対策に流用できるからです。時間的に余裕がある分、英語の勉強にも集中できます。ただし、入学後においては、修士論文の内容が「税法」に関するものになりますので、税法の勉強も必要になります。

なお、英語に関しては、他の研究科と同様に読解中心で、その内容は経営系の英文となります。以上、筆記試験について説明してきましたが、どの研究科でも、必ず出題傾向というものがあります。事前に過去問を入手し、しっかりと対策を練るようにしてください。

研究計画書・面接対策

研究計画書

税法科目免除の大学院を志望する場合、研究科にかかわらず当然、そのテーマは「税法に属する科目等」から選ばなければなりません。研究計画書と実際の修士論文が大きく異なることもありますが、出願時の研究計画書は、必ず税法関連(財政学)のテーマで作成してください。
研究テーマの選び方と研究計画書の作成について簡単にご紹介します。

研究テーマの選び方

  • (1) 各分野の専門書をじっくり読みこなす。
  • (2) その中から興味のある論点(問題点またはキーワードでも良い)を2~3つ探す。
  • (3) それに対する論文等を各論文につき2~3つ収集し、それを読む。
  • (4) その中で最も興味のあるものを1つに絞る。
  • (5) 足りない論文や各論レベルの専門書を収集する。

研究計画書の作成

  • (1) 研究目的
  • (2) 先行研究の検討
  • (3) 現在の判例や学説を集約、学説上の問題点の指摘
  • (4) 結論(今後の展望)
  • (5) 参考文献

といった手順で研究計画書を作成していくことになると思います。
また、修士論文を作成する際には必ず大量の文献を収集することになりますので、今のうちから文献を収集することに慣れておいた方が良いと思います。

面接対策

税法科目免除志望と答えるべきか?

面接試験に関して、受講生から「面接試験の際に、『税理士試験の科目免除を希望しますか?』と問われたとき、科目免除目的で入学希望であることは言わない方が良いのでは?」といった質問をよく受けます。

確かに、大学院といえば「研究する場であり、資格取得目的の場ではない」と思う方も多いことでしょう。しかし、大学院教育の目的として「人材養成」という側面がクローズアップされている昨今、面接試験で「科目免除希望ですか?」と問われれば、素直に「YES」と答えて構わないのではないでしょうか。ただし注意すべき点は、科目免除のみが単に目的ではなく、「今後のキャリア形成のため、高度なスキルを持った税理士になるために、その前提となる知識を身につけ、特定分野の研究・学習をする。そのための大学院進学である」という姿勢を貫くことです。

税理士「税法」科目免除大学院一覧

河合塾KALSの受講生が受験した実績がある大学院を中心に、科目免除が可能な主要大学院を一覧で紹介しています。

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