24年 富山大学・旭川医科大学 医学部学士編入試験合格者 合格体験記
33歳、女性。私立大学社会学部社会福祉学科、同大学院修士課程修了。
大学病院でソーシャルワーカーとして勤務。医療と福祉の更なる連携強化の必要性を実感し、医学部受験を決意。2022年4月KALS入校、仕事を続けながら、2024年12月、富山大学、旭川医科大学に合格。
プロフィール
私立中高一貫校出身。女子校でしたが、3分の2以上が理系志望、医学部進学者も多い環境の中で、私は当初から文系選択でした。ある国立大学を志望し、現役、一浪と挑戦するも不合格。進学した私立大学で高齢者福祉のゼミに所属、認知症カフェのボランティア活動に参加。大学では履修できる最大の192単位全てを取得し、GPAは最終3.87/4.00でした。大学院でも同じ教授に学び、修了後、地元の大学病院に医療ソーシャルワーカー(MSW)として入職し、現在8年目です。MSWは、医療の現場で働く福祉職で、患者さんを一人の生活者として捉え、患者さんを含めた"各専門家"と連携、協働しながら、患者さん、家族等の人生の再構築を支援しています。特に私は、がん・緩和ケア分野での退院支援、心理社会的援助、意思決定支援などに従事してきました。人生の最期に向き合うという失敗が許されない現場で、高度な専門性をもつ他職種と協働するためには、まず自身の専門性を高める必要があり、毎週のように研修会や学会に参加していました。実践の中で、全人的医療の発展のためには、医療と福祉の更なる連携強化が必要だと感じ、医学部学士編入を決意しました。自分の経歴、学力からフルタイムで働いて合格できるほど簡単な試験ではないと感じていましたし、中途半端な形で仕事を続けては職場にも迷惑がかかるかもしれないと退職することを相談しましたが、上司からは、"辞めることは、いつでもできるから"と、勤務形態の変更を提案いただき、2023年7月からは週5日、1日4時間勤務(当時は、この勤務形態が、社会保険に加入できる最低ラインでした)で、MSWとして働きながら、受験に臨むことができました。受験勉強開始からの約1年間は、フルタイム、残業も多く、勉強の進捗状況からも、2024年度の試験が本番になると考えていました。
受験先と受験結果
複数校併願できるのが学士編入の特徴の一つなので、とにかくたくさん受験するというのも戦略の一つだと思います。一方で、気力、体力、そして金銭面も決して楽ではないので、私は、生命科学・英語で受験可能、文系でも合格実績のある大学を中心にかなり絞って受験しました。なるべく多くの大学の入学案内や募集要項に目は通し、自身の強みと、大学側が求める人物像を比較検討し、受験校を選定しました。また、多くの大学で、その大学が所在する都道府県の医療課題、地域医療への興味関心も問われます。地域の医療の実情を知るには、各都道府県の医療計画を読むことも大切ですが、個人的には、実際にその地域に赴いて、地元の方の何気ない日常を肌で感じることも大切だと考えており、一次試験後や二次試験前には、数日ずつ、時間を取るようにしました。筆記試験の勉強も行いつつなので、3大学でもなかなか大変でした。しかし、勉強の合間の息抜きにもなりましたし、そこでの出会いや気づきを、口頭発表や面接に盛り込むことができ、自分自身の発表の独自性につながったと思っています。
2023年度 ※学士編入試験の雰囲気を知る目的で受験
一次試験 | 二次試験 | |
---|---|---|
長崎大学 | 8/23 × | - |
弘前大学 | 11/26 × | - |
2024年度
一次試験 | 二次試験 | 備考 | |
---|---|---|---|
長崎大学 | 8/23 × | - | |
富山大学 | 9/1 ○ | 11/3 追加 | ※発表概要〆切:10/8 |
旭川医科大学 | 10/26 ○ | 11/23 ○ |
富山大学へ進学予定です。追加合格の連絡から、合格通知が届くまで約1週間でした。以前、合格体験記で、"追加合格の場合は、なかなか合格通知が届かないので、気長に待つように"と読んでいたので、いくぶん安心して待つことができましたが、それでも不安でした。合格通知が届いてからは、入学金納入や必要書類送付など、1週間ほどの限られた期間で行うべきことが色々ありました。その後、ちょうどクリスマス頃に、富山大学から、分厚い封筒が届きました。中には、参考図書リストや組織学総論の課題が入っており、大人になってから、こんな粋なクリスマスプレゼントを受け取ることになるとは!と嬉しかったのも束の間、慣れないスケッチに戸惑いつつ、"春から医学生になるんだ"ということを実感しながら、合格後、ほぼフルタイムに戻した仕事の合間を縫って、2月現在、課題に取り組んでいます。
勉強方法
生命科学
大学受験時代、センター試験は生物選択でしたので、全くの初めてではありませんでしたが、今の高校生はかなり難しいことまで勉強しているようですので、一から学ぶつもりで取り組みました。以下、私自身が大事だなと思ったことを列挙します。
★とにかく"慣れ"の問題
タンパク質と聞くと、"骨付きのお肉"を想像してしまう、このイメージを払拭するまでに、ものすごく時間がかかりました。でも、時間はかかったものの最終的に多くことを理解できるようになったので、井出先生がよくおっしゃっていた、"慣れ"は大切で、簡単にあきらめてはいけないことを実感しました。
★今どこの話をしているのかを意識する
分子レベルの話から、身体全体の話まで、様々なスケールの話が出てきます。KALSのカリキュラムは理解しやすいように構成されていますが、それでも迷子になってしまうことがあったので、今自分は、どの部分を、どの規模感で学んでいるのかということを意識するようにしていました。
★KALSを信じてついていく
大学受験時代、塾や参考書等、身につかないまま、あれこれ手を出したことが反省材料の一つだったので、今回はKALSの教材だけをやり込もうと心に決めていました。井出先生の講義は何度も繰り返し視聴しました。富山大学では、いわゆる"雑談"として先生がお話しされていた内容が総合問題の英文に出て、一瞬驚いた後は、落ち着いて読むことができました。おすすめの参考図書はできる限り読むようにしました。『がん遺伝子の発見』、『オートファジー』、『発生のしくみが見えてきた』は何度も読みました。その他、福岡伸一先生の『生物と無生物のあいだ』、『新版 動的平衡』は自然科学的なものの見方を知るきっかけとして初期に読んで、とても参考になりました。
★あれ?と思ったら早めに相談を
今回の受験を通しての一番の反省点は、完成シリーズに入った途端、ついていけなくなり、そこで数週間立ち止まってしまったことです。どのシリーズもみっちり予定が立てられていて、特に完成・実戦は、こなすべき問題数も多く、難易度も高くなり、一度リズムを崩すと、容易に取り返しのつかない事態に発展します。あれ?これでいいのかな?このまま進んでいいのかな?と思った時には、カウンセリング等を利用して、早めに軌道修正するべきでした。
英語
受験前は、TOEIC500点〜600点の間をうろうろ彷徨っているレベルでした。英語については、どこかで一度本気で勉強したいと前々から思っていたので、思い切って英語のコーチングに投資しました。ちなみに受講費用は、教育訓練給付制度を利用し、一部助成を受けることができました。最終的に、TOEIC790点の状態で、2024年度の編入試験に臨みました。苦手意識がなくなったわけではありませんが、英語がある程度できることで、出願校の幅が広がることを実感しました。
これから医学部編入を目指す皆さんへ
人生は偶然と選択の連続で、これまで、細々とでも自身が与えられた環境で、その時できる限りのことをしてきた結果、今があるのだと感じています。皆さんもお一人お一人、色々な経験を経て、思いを持って医学部学士編入に挑戦されていることと思います。ぜひ、ご自身のこれまでを大切に、自分自身を信じて、未来に向かっていただきたいです。私自身も、今回いただいたチャンスを無駄にすることなく、再び学生として勉強できることに感謝して、"やっぱり学士編入の学生を入学させてよかった"と思ってもらえるよう、次に続いてくださる皆さんのことも考えながら、春から引き続き頑張りたいと思います。