- 作成日 2026/9/28
- 執筆 加賀 健司 講師
医学部学士編入試験において、志望理由書はほとんどの大学で出願時に提出が求められる書類です。筆記試験の点数とは別に、受験者がどのような経緯で医学を志したのかを伝える、最初の自己表現の場になります。
このコラムでは、学士編入試験において求められる志望理由書について、選考における役割や評価の観点について見ていきます。読後、これらについての理解が深まり、志望理由書の作成に早めに取り掛かろうという気持ちが湧いていると嬉しい限りです。
志望理由書が選考で果たす役割
ところで、学士編入試験においてよくあるウワサの1つに「結局は筆記試験の結果では?」というものがあります。確かに、筆記試験は入学後の勉強についていくための学力があるかを測るための重要な試験です。しかし、面接は筆記試験とは別の尺度で受験生の資質や素養、熱意や将来性を見るものですから、筆記試験がどれだけできていても、面接で不合格になる、というパターンはいくらでも見受けられます。(筆記試験でダメだった場合は勉強をしますが、面接でダメだった場合、どう改善しますか? 面接でダメだった、というのは想像以上に堪えるものです。)
そのような面接の、土台となる書類が志望理由書です。面接官はこの書類の内容に即してさまざまな質問を受験生に投げかけてきます。
つまり、志望理由書に書いた内容は、面接で必ず深掘りされる前提で準備する必要があるのです。書いた動機や経験について「なぜそう考えたのか」と問われたときに、書面以上に語れる状態であることが理想です。このことは同時に、テキトーに書き上げた書類の場合、面接でかなり苦労する、ということを意味します。
志望理由書について、自分で面接の出発点を設計する書類だと捉えると、何を書くべきかが明確になります。書面と面接を一本の線でつなぐことが、選考を有利に進める鍵なのです。
評価される観点
志望理由書の形式は大学ごとに異なりますが、おおよそ以下の点が問われると考えて良いでしょう。
- 1. なぜ医師を目指すのか
- 2. あなたの専門性は
- 3. 専門性をどのように活かすか
順に見ていきましょう。まず1.ですが、いくつかの注意点があります。具体的には、①何らかの課題意識が明確であること(その課題は個人的なものではなく、広く社会で課題となっているものであること)②医師になることが、その課題の解決に向けて極めて重要であること、といったことです。また、このような医師志望理由だけでなく、「なぜその大学を目指すのか」という大学志望理由も必要となります。
次に2.ですが、自分自身がこれまでどのような専門性を培ってきたかを論じるものです。医学・医療分野以外の分野の専門性を有する人が、それを発揮し、医学・医療の課題の解決に取り組んでほしい、というのが学士編入試験の趣旨です。この趣旨に沿った人材であることをアピールすることになります(ただし、専門性をアピールしづらい人は合格できないということではありません)。
最後に3.ですが、簡単に言えばここまでの総括であるとともに、自身の将来像=キャリアプランを提示するものです。ストレートで医学部に入った人たちとは異なり、学士編入試験を受験する人は、極端に言えば「回り道をしている暇はない」人たちですから、その歩みをある程度具体的に描いて示す必要があります。
以上の事柄について、一貫性のある論を組み立てていくことが求められるわけです。「人の役に立ちたい」という思いだけでは、他の職業でも実現できると受け取られかねません。そもそも、受験生は皆、このような思いを持っているわけですから、ここで差は生じません。これまでの経験を経て、なぜ医師なのか、そしてどんな医師になりたいのか。これらの問いに自分の言葉で答えられることが、説得力の源になります。
志望理由書を甘く見ないこと
志望理由書を甘く見ている人は本当に多いです。実際に筆記試験を通過しない限りは面接にたどり着くことなどできないわけですから、筆記試験を重視するのは理解できます。しかし、筆記試験を通過しても最終合格しなければ意味がない、というのも事実です。そして最終合格に直結するのが志望理由書なのですから、これを周到に用意することは、最終合格に向けて極めて重要なことだと言えます。
ところが、です。繰り返しになりますが、志望理由書を甘く見ている人が本当に多いのです。これは「自分のことを書くのだから簡単に作成できるだろう」という認識があるからかもしれません。
ですが、志望理由書は「書いて提出する」ことが目的ではありません。「書いて提出して読んでもらって分かってもらって採用してもらう」のが目的です。だからこそ、書いたものを他者に読んでもらい、都度ブラッシュアップしながら作り上げていく必要があるのです(志望理由書には完成がない、と思っても良いでしょう)。
志望理由書の作成には1か月以上かかる可能性がある。そのように考えておいてください。ただし、それをきちんとこなすと面接に大いに役立ちます。志望理由書と面接は地続きであり、書面の充実度がそのまま面接での説得力につながります。そうすると、筆記試験の勉強にも身が入る、というわけですね。なお、面接そのものの備えは、面接対策 で詳しく解説しています。
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